私の糸魚川暮らし:File02

私の糸魚川暮らし:File02

四季の中で冬の季節が一番好きです。
ここ雪国の里がその最も美しい姿を見せるのは、
最も厳しい季節の間で、
時が静かに音もなく
ゆっくりと流れていきます。

中島 弘(69歳)

約20年前に東京から糸魚川市にUターン。
「田舎暮らし」を実現するため、
糸魚川市御前山地区に築200年前後の古民家を購入。

ーなぜ糸魚川に?

 正確にはJターンといえばよいのでしょうか。生まれ故郷である糸魚川市に戻ったのは20年ほど前で、それまでは東京でごく普通のサラリーマン生活をしておりました。両親の住んでいた実家は糸魚川の街中でしたが、かねてから夢に描いていた「田舎暮らし」を実行するため13年ほど前に現在住んでいる御前山地区へ移住しました。自分自身の感性、好みのライフスタイルからいうと大都市の生活は肌に合わなく、定年間際まで働いたら人生の晩年には現在のような山里に住みたいと考えていました。
改修後(現在)

改修後(現在)
(左下)改修前 築200年の古民家

ー住まいのこだわりに関して、改修にかかった期間、範囲は?

 現実に一年を通じて毎日生活するうえで、はたして自分たち夫婦にとって生活可能な場所かどうかの確認、具体的には特に冬の積雪量や幹線道路の除雪体制などを考慮しながら、念願の古民家、築200年前後の家屋にこだわって探し、現在の家を購入しました。
 とにかく豪雪地域に200年もの長きにわたって耐え抜いてきた歴史そのものを手に入れたかったので、家の骨組み材のみを生かし、かやぶき屋根、壁、床などはすべて除去し、基礎の水平レベルを修正し、いったん玄関から入ったらあとは年寄りには優しいバリアフリーにしました。家の中にある不要なものの整理と廃棄処理、すすやほこりを取り除く掃除などから始まり、途中大工さんが他の仕事との兼ね合いもあり中断したりしながら、完成は約一年後でした。
 私自身も建築中の作業に当初からほぼ毎日参加し、特に不用品のかたずけ、掃除、柱や梁のすす落とし、一部の塗装などを自ら手がけました。完成までの自分も参加して作業したこの工事中期間が本当に楽しかったです。屋根裏から出てきた古い農機具を利用していくつか照明器具も作りました。

昔の農機具を利用して作った照明

(上)昔の農機具を利用して作った照明

ー住まいの中でお気に入りの場所や過ごし方は?

 西向きの窓から白馬連峰の山の連なりや、ヒスイ峡の明星山が一望できるのですが、夕日の沈むころの景色は四季折々の変化を感じつつしばし見とれてしまいます。それと冬期間は居間の一部屋だけはまきストーブで暖房してますが、時折うつらうつらうたた寝してしまい、ふっと気づいて横を見ると家内もこっくりこっくりしていることがあり、そんな情景の中に夫婦二人だけの静かな平和な時間を享受しています。二人とも四季の中で冬の季節が一番好きです。ここ雪国の里がその最も美しい姿を見せるのは、最も厳しい季節の間で、時が静かに音もなくゆっくりと流れていきます。雪が収まる3月末から4月にかけての雪上トレッキングは楽しみの一つで、普段歩けない場所でもスノーシューを履いてあちこちと歩き回ります。

ー糸魚川暮らしをして変わったことは? 糸魚川で暮らす醍醐味とは?

 ほんの短い期間ではありましたが、都会に住む幼い孫たちと海や山で遊び、かけがえのない時間を持てたこと、老いた両親の霊山への旅立ちをを身近で見送ることができたこと、そのどれもが田舎暮らしをしてこそ可能となった体験であり、私にとって貴重なものでした。
 そしてここでの生活は私を徹底した筋金入りの“愛国者”に変えました。人のほとんど住んでいない過疎地に暮らしてみて初めてゆっくりと昨今の不穏な国際情勢などを真剣に考えてみるようになり、この日本の社会のありよう、国のあるべき姿、体制について考えるようになりました。“愛国”といっても国粋主義を意味するのでなく、単純純粋にこの日本の国を愛し、日本人として生まれた幸福感や誇りを感じる人間に変わったということ、それに他人であっても人間同士の絆の大切さと温かさが分かったことです。

夫婦で畑仕事・居間の様子

(左)夫婦で畑仕事 (右)居間の様子

ー糸魚川暮らしを考えている人に一言

 同じ糸魚川市内とはいえ、海岸沿いと山沿い地域では冬の積雪量がまったく違うので、移住しようとする地域の自然条件や生活習慣、行事、在住必要負担金(区費等)の額などについて可能な限り事前に知っておくことが重要です。事前に知っていれば受けるカルチャーショックも少なくて済むというものです。
 それと自分からその地域の人たちの中へ溶け込んでいく努力を惜しまなければ、周囲の人たちも必ず親切に助力し生活上のアドバイスをしてくれるはずです。最初は田舎の人たちの内向的な性格が時として閉鎖的に感じられるかもしれませんが、いったん気心が知れれば気軽に付き合える良き隣人となってくれます。不安感を捨てて飛び込んでみたらどうでしょうか? 都会生活の便利さを捨てる代償として逆に得られるものは意外に大きいものかもしれません。